最高裁判所第二小法廷 昭和41年(オ)518号 判決 1967年5月19日
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告人の上告理由第一点について。
所論債権譲渡に関する事実は、被上告人の請求原因事実と相容れない事実として主張されたものであるところ、原判決は、その挙示の証拠関係に徴して、被上告人が請求原因として主張する債権者の交替による更改契約成立の事実を認定しているのであるから、所論主張について原判決に判断遺脱があるとの所論は採用できない。
従つて、また所論債権譲渡を前提とする論旨は、すべて、原審の認定に反する事実を前提とするものであつて、採用の限りでない。
同第二点について。
原判決が被上告人の本訴請求について、本件抵当権の被担保債権たる被上告人の上告人に対する債権中利息債権の一部不存在を判示していることは、所論のとおりである。しかし、抵当権の性質上、別段の特約その他特別の事情のないかぎり被担保債権の各部分が抵当目的物の全体によつて担保されているものと解され、本件のごとく被担保債権元本に対する利息債権の一部が有効に発生しなかつたからといつて、そのことの故に抵当権の全部または一部に消長をきたすことはないものといわなければならない。従つて、別段の特約その他特別の事情の存することの主張認定のない本件において、上告人の反訴請求たる本件抵当権不存在確認請求を全部棄却した原判決は正当であつて、その点に理由不備ないし理由そごの違法は存しない。よつて、所論は採用できない。
同第三点について。
甲一号証(記録三一丁)に所論偽造を疑うべき証拠資料は記録上存しない。所論は、すべて、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定について異論を述べるにすぎず、原判決に所論違法はないから、論旨は採用できない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)